いつもあとをつけてきたり、監視してきたり、無言電話などのいやがらせをしてくるストーカー。
そんな彼らを、許せないと腹がたっている女性もたくさんいることでしょう。
なかには警察にストーカーを捕まえてもらっても、本当に厳しく処分してもらえるのか疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
しかしストーカーの罪で逮捕された犯人がその後に受ける処遇は、けっして軽いものではありません。
今回は、ストーカーの罪で逮捕された犯人がその後どうなるのか知りたいという人のために、ストーカー犯が逮捕された後の流れについて説明していきます。
つきまとい等の行為を繰り返すとストーカーの罪で逮捕される
そもそもどういう行為をすると、ストーカーの罪で逮捕されるのでしょうか?
2000年に施行されたストーカー規制法では、以下8つの行為を「つきまとい等」として規定しています。
- 「つきまとい」「待ち伏せ」「押しかけ」「うろつき」
- 監視していることを告げる行為
- 面会や交際の要求
- 乱暴な言動
- 無言電話や連続した電話、メール
- 汚物などの送付
- 名誉を傷つける行為
- 性的羞恥心の侵害
つきまとい等の行為をしたからといって、すぐにストーカー犯として逮捕されるわけではありません。
しかしつきまとい等を繰り返すと、それはストーカー行為とみなされ、逮捕される確率が高くなるのです。
事前にストーカー行為をやめるように警察から警告を受ける場合もあれば、警告なしにいきなり逮捕されるケースもあります。
どちらにしてもストーカー行為を繰り返していれば、逮捕される可能性があることは間違いありません。
ストーカーの罪で逮捕された犯人は、その後どうなる?
ストーカーの罪で逮捕された犯人が、その後どうなるかご存知でしょうか?
ストーカーに限らず、逮捕された人たち全員が刑務所に入るわけではありませんが、しばらくの間は警察に身柄を拘束されます。
その間、警察や検察によって取調べを受け、起訴、不起訴の判断をされたうえで裁判によって判決が下されるのです。
では具体的に、ストーカーの罪で逮捕されるとどのくらいの期間身柄を拘束されるのでしょうか。
ここでは、ストーカー犯が逮捕されてから裁判によって判決が下されるまでの流れについて説明していきます。
ストーカーの罪で逮捕された被疑者は最初の72時間の間に取調べを受ける
ストーカーの罪で逮捕された犯人はまず警察署の留置場に入れられ、警察の取り調べを受けます。
逮捕されてから48時間以内に、今度は検察庁に事件と身柄が送られ、検察でも取調べを受けることになります。
検察庁での取調べは最大24時間で、この間に被疑者をこの後「勾留」するかどうかが検察によって判断されるのです。
勾留とは、事件の被疑者の身柄を警察の留置場などで拘束することを意味します。
勾留されるかどうかの判断基準は、以下の要件にかかっています。
- 住所不定の場合
- 逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合
- 犯罪の嫌疑が明らかな場合
勾留の必要があると判断された場合、検察は裁判所に勾留請求を出し、これを裁判所が認めれば被疑者は勾留されるという仕組みです。
勾留の必要がないと判断された場合は釈放されますが、ほとんどの場合、被疑者は勾留されます。
ストーカーの罪で逮捕された被疑者は最大23日間身柄を拘束される
検察から身柄拘束の必要性を認められ、裁判所が検察の請求を認めた場合、被疑者はそこから10日間の勾留期間に入ります。
この期間中にも捜査や取調べが行われ、事件の起訴、不起訴の判断が行われるのです。
10日の間に起訴、不起訴の判断ができなかった場合には、そこからさらに10日間、勾留期間が延長されます。
被疑者がストーカー行為を何度も繰り返していた場合、それだけ裏付け捜査の数も増えるため、勾留は長くなりやすいです。
また被疑者が罪を認めなかった場合も、勾留期間が延長されるケースが多くなります。
被疑者が逮捕されてから警察での取調べが最大48時間、検察での取調べが最大24時間、その後の勾留期間が最大で20日間です。
これらをすべて合わせると、被疑者は最大「23日間」身柄を拘束されることになります。
この23日間の間に、被疑者の起訴、不起訴が決定されるのです。
法律上、ストーカーの罪で起訴された場合の裁判はどうなる?
ストーカーの罪で逮捕され、起訴された場合、事件の判決を下すための裁判が行われます。
ストーカーで起訴された場合、行われる裁判は以下2つのどちらかです。
- 略式裁判
- 刑事裁判
このうちのどちらで裁かれるかは、被疑者にとって非常に重要な問題になります。
なぜならこの2つのどちらで裁かれるかによって、被疑者のその後の処遇も大きく変わってくるからです。
ここでは、それぞれの裁判の特徴と被疑者の拘束期間によって説明していきましょう。
略式裁判の場合、被疑者は罰金を支払い、その場ですぐに身柄が解放される
勾留の際に、検察が裁判所に公判を請求しなければ「略式裁判」での判決となります。
略式裁判とは、手続きが簡略化した裁判のことで、通常のように法廷で裁判が行われることはありません。
略式裁判の場合、書面で判決が下されますが、刑罰は100万円以下の罰金となっており、被疑者の身柄はその日のうちに釈放されます。
刑罰が軽く、すぐに釈放されることから、略式裁判で裁かれたほうが被疑者にとってはメリットが大きいと言えるでしょう。
ただし略式裁判は、被疑者が罪を認めている場合にしか行われません。
そのため略式裁判での判決は自動的に有罪となるので、罪を認めない被疑者の裁判は刑事裁判で行われることになります。
刑事裁判の場合、裁判が開かれるまで被疑者の身柄は拘束され続ける
勾留の際、検察が裁判所に対して公判を請求した場合は刑事裁判が行われます。
刑事裁判は略式裁判と違い、法定で行われますが、裁判が行われるのは起訴されてから約1か月後です。
刑事裁判では裁判が開かれるまでの間、被疑者の身柄は保釈されないかぎり拘束され続けます。
書面だけで行う略式裁判と違い、被疑者は裁判で意義を申し立てることもでき、判決も裁判を通して下されます。
無罪になる確率もゼロではありませんが、刑事裁判における被疑者の有罪率は99.9%です。
懲役が付かず罰金刑になれば、その後身柄は釈放されますが、逮捕されてから拘束が解かれるまでの期間は実に約2か月にもおよびます。
法律上、ストーカーの罪で起訴された場合の罰則はどうなる?
ストーカーの罪で起訴され、有罪判決が出た場合、被疑者への罰則はどのように規定されているのでしょうか?
そもそもストーカー犯が逮捕されるケースは、おもに以下2種類となっています。
- 警察の警告や禁止命令を無視して逮捕された場合
- 被害者に処罰を求められて逮捕された場合
このうち、どちらのケースで逮捕されるかによっても罰則は変わってきます。
ここではこれらのケースがどのようなものを指すのかについてと、それぞれの罰則について説明していきましょう。
禁止命令を無視した場合の罰則は2年以下の懲役か200万円以下の罰金
ストーカーの被害にあっている女性が警察に相談した際、相手が分かっていても警察が犯人をすぐに逮捕するようなケースはほとんどありません。
多くの場合、まずは警察からストーカー犯に「ストーカー行為をやめるように」と警告が出されるのです。
警察から警告を受けたにも関わらず、犯人がストーカー行為を繰り返した場合、今度は公安委員会から禁止命令が出されます。
禁止命令が出たにも関わらず、ストーカー行為をすると逮捕されるのです。
禁止命令に違反して逮捕された場合の罰則は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金です。
先ほど紹介した略式裁判は100万円以下の罰金刑に値する犯罪にしか適用されないため、犯人は場合によっては長期間拘束されることになるでしょう。
被害者が処罰を求めた場合の罰則は1年以下の懲役か100万円以下の罰金
警察が警告や禁止命令を出さずに、ストーカー犯を逮捕するケースもあります。
それは、被害者が犯人に対する処罰を警察に求めた場合です。
この場合、被害者は警察に被害届を出したり、犯人を刑事告訴する必要があります。
とはいえ被害届を出したからといって、ストーカー犯が確実に逮捕されるというわけではありません。
被害届を出したものの、犯人は逮捕されず警告で処理されたというケースもなかにはあるようです。
ただしストーカー犯がストーカー行為を繰り返し行っていて、悪質だと判断されたケース。
またストーカー行為が、被害者に危害を加える危険が高い行為だと判断されたケースでは逮捕される確率が高くなります。
このようにストーカー犯が警告や禁止命令なしに逮捕された場合、犯人には1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられます。
被害者との示談が成立すれば不起訴処分になり無罪となる
逮捕されたストーカー犯は勾留中、検察に起訴、不起訴の判断をされると先ほど説明しましたが、どういう場合に不起訴になるのでしょうか。
そもそも起訴とは、検察が裁判所に対して事件の審判を求める行為です。
一方、不起訴はその時点で無罪になるということなので、不起訴になるためにはそれなりの理由が必要です。
ストーカー犯が不起訴処分になるためには、被害者との間に示談を成立させることが必要になってきます。
示談が成立した場合、被疑者は不起訴処分となり釈放され、その後事件が裁判にかけられることもなくなるのです。
示談は被疑者の弁護士と被害者の間で行われ、示談金は安ければ10万円、高ければ100万円を超えるケースもあります。
被疑者は身柄を拘束されている23日間の間に示談交渉を成立させなければ、起訴されることになるのです。
まとめ
ストーカーの罪で逮捕された犯人は、最初の48時間以内に警察から取調べを受け、その後検察に身柄を送られます。
検察でも24時間以内に取調べが行われ、この間にこのまま身柄を勾留するかどうかが決定される仕組みです。
ほとんどの場合、身柄は勾留され、ここから最大で20日間の間に起訴、不起訴の判断がなされます。
起訴された場合は裁判を受けますが、この時点で無罪判決を勝ち取る可能性はほとんどありません。
警察からの警告や禁止命令を無視し、ストーカー行為を繰り返して逮捕された犯人は、2年以下の懲役か200万円以下の罰金。
警告や禁止命令なしに逮捕された犯人は、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられます。
ストーカーで逮捕され起訴された犯人の処遇は、けっして軽いものではありません。
ストーカー犯を厳重に処分してほしいと思っている方は、安心していいと言えるでしょう。