ストーカー犯が裁判にかけられた場合、「刑事裁判」と「民事裁判」のどちらかで裁かれます。
刑事裁判はストーカー犯が逮捕された後、有罪、無罪の判決を決めたうえで懲役や罰金などの刑罰を決める裁判です。
刑事裁判の場合、ストーカー犯が有罪になっても、被害者に慰謝料などは支払われません。
一方、民事裁判では被害者がストーカー犯を訴え、勝訴すれば慰謝料を請求できます。
ストーカー被害で散々苦しめられたのに、刑事裁判になって慰謝料も貰えないのは納得できないという人もいることでしょう。
そこで今回はそんな方たちのために、ストーカー相手に自分で民事裁判を起こす方法や裁判に勝った場合に貰える慰謝料額などについて説明していきます。
ストーカーを訴えるには、裁判所に訴状を提出して裁判に出廷する
ストーカー犯に対して裁判を起こそうと思ったら、まずは裁判所に訴えを起こすための「訴状」を提出する必要があります。
裁判所が訴状を審査し、問題がなければ口頭弁論の期日を決め、原告(訴えられたストーカー犯)に訴状の写しを送ります。
期日に1回目の「口頭弁論」が行われますが、これは被告(訴えた被害者)が被害に関する意見や考えなどを述べ、原告はそれに対する受け答えをするものです。
口頭弁論は日付を変えて複数回開かれ、そこではおもに以下のことが行われます。
- 証拠が正しいかどうかの確認
- 証人や目撃者に対する尋問
- 両者の弁護士による被告、原告への尋問
すべての口頭弁論が終わると判決が下されますが、判決の前に裁判官から和解案を提案され、そこで提案された慰謝料額に着地するケースがほとんどです。
ストーカーの裁判ではどんなものが証拠になるのか?
ストーカー相手に裁判を起こそうと思ったら、必ず必要になってくるのがストーカー被害を受けたという証拠です。
先ほども説明したとおり、口頭弁論では証拠が正しいかどうかの確認も行われるため、証拠がなければ話になりません。
では、どういったものなら証拠として認められるのでしょうか?
裁判と聞くと固いイメージがあって、LINEのトーク履歴などでも証拠になるのかと不安に思っている方もいることでしょう。
次に、ストーカーを訴えるために必要な証拠として有効なものについて説明していきます。
通話記録や着信履歴、メールやLINEもストーカー被害の証拠になる
ストーカー規制法で禁止されている行為の1つに、「無言電話、連続した電話、ファクシミリ、メール、SNS等」というものがあります。
これは相手に対して無言電話をかけたり、連続した電話、ファックス、メールなどを送る行為を禁止したものです。
そのため無言電話の通話記録や着信履歴、メールの受信履歴や内容などは充分ストーカー被害を受けたという証拠になります。
LINEもメールの代わりのメッセンジャーサービスであるため、相手のLINEに何度もメッセージを送る行為も立派なストーカー行為です。
連続していなくても卑わいな写真や言葉、監視していたことを告げるような内容のメッセージもストーカー行為として禁じられているため証拠になります。
これらの証拠は、できるだけ多く保存しておくようにするといいでしょう。
ストーカーを相手に裁判を起こして勝った場合に貰える慰謝料の額は?
ストーカーに対して民事裁判を起こし、勝訴または和解した時に貰えるのが慰謝料です。
裁判を起こした場合、慰謝料額がいくらになるのか気になる人は多いのではないでしょうか。
ストーカー被害の慰謝料は平均するとだいたい150万円ほどですが、安ければ数十万円、高ければ数百万円と幅広くなっています。
せっかく裁判を起こすのなら、できるだけ慰謝料を貰いたいものです。
ここでは、ストーカーへの訴えが認められた場合に、高額の慰謝料が貰えるのはどんなケースなのかについて説明していきます。
立場を利用したストーカー行為などは、慰謝料額が高くなる
ストーカーの裁判において慰謝料が高額になるケースには、以下のようなものがあります。
- ストーカー行為により被害者が怪我をしたり、病気になった
- 被害者に落ち度がない
- 立場を利用してストーカー行為を行った
ストーカー被害によって怪我や精神的な病気になった場合、損害賠償として治療費やカウンセリング代、治療施設までの交通費なども請求可能です。
被害者に落ち度がまったくなかった場合は、慰謝料も高くなりますが、逆に落ち度があると認められた場合は慰謝料を減額されます。
これらのなかでも特に注目したいのが、立場を利用してのストーカー行為です。
これは会社の上司と部下、大学の教授と生徒などの権力関係を持ちこんでストーカーをする行為になります。
平成11年の裁判の判例では、このケースでストーカー犯が750万円の慰謝料の支払いを命じられています。
ストーカー犯を訴えて勝訴した場合のメリットとデメリットは?
ストーカー犯を訴えて裁判に勝ったり和解した場合には慰謝料が貰えますが、もしあなたがストーカーされていた場合、それだけで満足できますか?
訴えた人の本来の目的は、ストーカー犯にストーカー行為をやめさせることにあるはずですから慰謝料を貰っただけでは満足できないという人もいるでしょう。
しかし相手から慰謝料を貰うことによって、ストーカー行為をやめさせることが期待できるのです。
その一方、ストーカーから報復を受けるリスクがあるというデメリットもあります。
ストーカー行為をやめさせられるかもしれないのに、報復は受けるかもしれないというのはどういうことなのでしょうか?
ここでは、ストーカー犯を訴えて勝訴した場合に起こり得るメリットとデメリットについて説明していきます。
メリットはストーカー犯を困窮させ、ストーカーする気や暇をなくせること
裁判を起こした被害者が慰謝料を貰えるということは、ストーカー犯は慰謝料を支払うということでもあります。
先ほども説明したとおり、裁判で負けたストーカー犯が支払う慰謝料は平均150万円と高額です。
ストーカー犯に充分な貯金があるのなら慰謝料は一括で支払わなければなりませんし、家や車などの資産があれば差し押さえられます。
また同じことをして慰謝料を請求されれば、どんどん経済的に困窮していくため、ストーカー行為をしなくなることが期待できるでしょう。
ストーカー犯に充分な貯金や資産がなかった場合は、毎月の給料から少しずつ慰謝料を支払うことになります。
こうなると生活は苦しくなり、それまでより働かなければいけなくなるため、ストーカー行為をしている暇がなくなるのです。
デメリットはストーカー犯に住所がばれ、復讐されるおそれがあること
ストーカー犯がストーカー行為をしなくなることが期待できる一方で、起こり得るのがストーカー犯の報復です。
訴えられ、多額の慰謝料を取られたストーカーは相手を逆恨みする可能性も充分あるでしょう。
さらに厄介なのが、原則裁判を起こすと相手に自分の住所がばれてしまうことです。
先ほど説明した裁判を起こすために裁判所に提出する訴状には住所を書く欄があり、その訴状の写しはストーカー犯にも送られてしまいます。
相手に対する復讐心があるうえ、住所も知られてしまっては、報復を受ける危険も一段と高くなるかもしれません。
しかし実際には、住所を伏せたまま裁判を起こした人のケースもあるようなので、裁判を起こす場合にはそのことを弁護士に相談してみたほうがいいでしょう。
住所が隠せない場合は、引っ越しを検討してもいいかもしれません。
まとめ
ストーカー犯を訴えたいと思ったら、訴状を作成して裁判所に提出すれば裁判を起こせます。
裁判では被害内容を伝えたり、証拠や証人の証言、被害者と加害者に対する尋問などを総合的に判断して判決が下されます。
特にストーカーされた証拠は大事になってくるので、しっかり保存しておきましょう。
ストーカー犯から送られてきたLINEなども証拠になるので、保存しておくのが賢明です。
勝訴したり和解した場合は慰謝料が貰えますが、これをストーカー犯に支払わせることでストーカー行為をやめさせることが期待できます。
一方で逆恨みされ、復讐される恐れもあるので注意が必要です。
もしストーカー犯を訴えたいと思っているのなら、是非この記事を参考にして充分な対策を練ってから裁判を起こしてください。