みなさんは、ご自身がしつこい嫌がらせやつきまとい行為を受けたり、身の回りの方が被害を受けた話を聞いたことはありますか?
今回は、嫌がらせと付きまといについて特集します。嫌がらせやつきまとい行為を受けると、常に不安・不快な気持ちになり、長期間続くと心身ともに疲れてしまいます。
どのような行為が嫌がらせや付きまといに当てはまるのかなどの基礎知識や、適用される可能性がある法律や条例についてご紹介します。
つきまといから身を守るための方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
嫌がらせに定義はある?嫌がらせに関する法律は?
まずは、嫌がらせについてです。「嫌がらせ」という言葉は、マイナスのイメージが強く、一つの行為を指す訳ではない漠然とした言葉です。
被害を受けるのはもちろん嫌ですし、加害者側にもならないようにしたいですよね。
嫌がらせには厳密な定義があるのかというと、実はありません。では、嫌がらせとは一体どんな意味なのか、セクハラなどのハラスメントも嫌がらせなのか。
また、被害を受けた時に法律が適用されるのかという点についてもご紹介します。
ハラスメントも嫌がらせ?嫌がらせは幅広い意味を持つ言葉!
嫌がらせは、一人に対してもしくは複数の人に対して意図的に相手が不快になる行動をとったり言葉にしたりすることを指します。
「不快になる行動や言葉」というのは、物的に実害があるようなことだけでなく、精神的な被害、つまり嫌がらせを受けた人が嫌な気持ちになることも含まれます。
そして、ハラスメントも嫌がらせ行為の一つです。セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、アルコールハラスメントとなどが有名で、
嫌がらせ行為の内容や環境によって細分化され「◯◯ハラスメント」という名前がついています。
ここまでで、嫌がらせの種類や範囲はかなり幅広いことがわかりました。ここからは、嫌がらせ行為を受けてしまった時に、嫌がらせをした側を罰する法律はあるのかを見ていきましょう。
嫌がらせイコール法律適用ではないが場合によっては適用される
被害が起こらないことが一番ですが、とても許容できないような悪質な嫌がらせ被害を受けたなら、ただ我慢し続けるのは苦痛です。
そんな時は、一人で抱え込むのは良くありません。まずは信頼できる友達や家族に相談しましょう。そして、嫌がらせに悩んでいた方が警察や弁護士の方に相談をして解決に向かうこともあります。
嫌がらせを受けたら必ず法律が適用されるかというと、そうではありません。でも、「嫌がらせ罪」のような全ての嫌がらせを罰する法律はありませんが、嫌がらせの内容によっては、法律が適用されるということです。
暴力が伴うと暴行罪や傷害罪が適用される可能性あり!
ここからは、具体的にどのような法律が適用される可能性があるのか、いくつかご紹介します。
暴力が伴う嫌がらせに対して適用される可能性があるのが「暴行罪」や「傷害罪」です。
暴力行為があったが、相手に傷害が生じなかった場合は暴行罪が適用される可能性があります。
相手に石を投げたけど命中しなかった、殴る、蹴る、突くなどの行為があったが相手が怪我を負わなかった場合などです。
傷害罪は、被害者側に傷害を負わせた場合に適用される可能性がある法律です。
殴る蹴るなどの暴行で相手に怪我を追わせた場合だけでなく、故意の無言電話や、嫌がらせで騒音を立てるなどの行為で、外傷がなくても人体の生理的機能を害した場合に適用されることもあります。
暴行罪の法定刑は2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料。傷害罪の法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
「殺すぞ!」などの脅しに適用される可能性があるのは脅迫罪!
人の生命や身体、財産などに対して害を加える旨を告知した場合には「脅迫罪」が適用されることがあり、その場合は2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金です。
脅迫罪は「害を加える=害悪(がいあく)」に該当することが条件です。この条件は2つあり、一般的に恐怖を感じるもので、加害者の関与によって引き起こすことができると感じられるものという2つの条件です。
例えば、「殺すぞ」や「お前の家に火をつけるぞ、お前も家族もどうなっても知らないぞ」という言葉を本気で言われたとしたら、客観的に見ても恐怖を感じますよね。
そして、加害者が放火をすることで実際に火事になる可能性があると感じられるので、脅迫罪が適用される可能性があります。
公然と相手を侮辱した場合侮辱罪が適用されることがある
「侮辱罪」に該当する嫌がらせもあります。これは、事実であることを摘示しないで公然と人を侮辱した場合に適用される可能性がある法律です。
どういうことかというと、「お前は馬鹿だ!」「頭がおかしい」など、具体的な事実を示さないで、多くの人の前で言われた場合には該当する可能性があります。
直接会っている相手に言うでなく、掲示板や公開されているSNSなどインターネット上の多数の人が見ることができるところに書き込みを行うことで侮辱罪になる可能性も含まれています。
侮辱罪の法定刑は勾留または科料で、比較的軽いものとなっています。
次に、侮辱罪と似ているようで違う、名誉毀損罪について見てみましょう。
本人の社会的名誉を傷つけたら名誉毀損罪が適用される可能性あり
名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、人の社会的評価を低下させるおそれのある行為をした時に成立します。
不倫をしている事実がないのに「あの人は◯◯という名前の上司と不倫している」などと根も葉もない噂を流したり、ネット上でもあちこちに書き込みしたとします。
これは、不倫をしていなかったとしても具体的に事実として噂を流され、本人の社会的な名誉を傷つける行為なので「名誉毀損罪」に該当することがあります。
名誉毀損罪は3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金刑になる可能性があります。
嫌がらせに関する法律のご紹介は以上です。嫌がらせの状況や内容によってはご紹介した法律が該当しないこと、他の法律が適用されることもあります。
実際に悪質な嫌がらせ被害を受けて対策をしたい場合には、警察や弁護士の方に相談することをおすすめします。
つきまとい行為って?ストーカーとは違う?被害に合わないためには?
次にご紹介するのは、つきまといについてです。つきまといと聞いて、どんな行為が思い浮かびますか?後をつけること、家や職場などで待ち伏せするような行為を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
つきまといは、広い意味でいうと嫌がらせ行為の一つと言えるでしょう。そして、ここまでに挙げた内容以外の行為もつきまといに当てはまる場合があります。
ここからは、つきまといという言葉の意味やどのような行為が当てはまるのか、つきまといの被害に遭わないようにするにはどうしたらいいか。
そして関連する法律としてストーカー規制法についても簡単にご紹介します。
ストーカーではなく恋愛感情が無くてもつきまとうことがある
まず、「つきまとう」という言葉には、いつもそばについて離れないことや、好ましくないことがいつも離れずにいるという意味があります。
そして、法律という観点から「つきまとい等」の行為をみると、ストーカー規制法に行き当たります。
ストーカーは恋愛感情を持った相手や、恋愛感情が満たされなかった相手への恨みなどの感情があり、つきまとい等行為を反復して行う場合を指します。
しかし、つきまとい行為をする時に必ず恋愛感情が伴っているとは限りません。
友人や職場の人など、双方に恋愛感情が無いのに妬みや恨みの感情などからつきまといのような行為をされて悩んでいる人もいます。
ここからは、被害に遭わないように自分でできる対策や、適用される法律などがないか見ていきましょう。
被害に遭わないように身を守りたい!きっぱり断り情報を与えない
しつこいつきまとい行為を受けないようにするにはどうしたらいいのか。そして、すでに被害を受けている場合、これ以上の被害を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
まず、しつこく電話がかかってきたら「電話をかけてこないで下さい」ときっぱりと断るなど、早い段階で拒否の姿勢を示しましょう。
また、着信履歴や手紙、メールなどは削除や破棄をせず記録に残しておくことで、もし警察などに相談するようになった時に証拠になります。
情報を与えないことも大切です。例えば、SNSで何気なく投稿している写真や文面から、居場所がわかること可能性や、行動パターンを推測される可能性があります。
リアルタイムで居場所がわかるような内容はSNSにアップしないことをおすすめします。
つきまとい被害対策はまだある!防犯グッズの活用と相談
つきまとい行為の中でも、後をつけるなどの直接的なつきまとい行為には、防犯グッズも有効です。防犯ベルを持ち歩いておき、夜道や人気のないところを一人歩きする時にすぐに鳴らせるようにするといいでしょう。
実際に何か危害を加えられそうになった時に使用するために持ち歩きますが、使用する機会が無かったとしても、防犯ベルを持っているという安心感を得ることができます。
そして、最も大切なのは「相談」です。被害に気づいたら、友人や家族など身近な信頼できる人に相談をすることです。
一人で抱え込まず、被害を受けていることを知っておいてもらいましょう。また、深刻な状況になる恐れがある場合は、警察や弁護士の方に相談する方法もあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。執拗な嫌がらせやつきまとい行為の被害を受け続けると、自分に原因があるのではないか、我慢するしかないという考え方になることもあります。
しかし、執拗な行為をやめない相手に対して、必要以上に我慢することはないのではないでしょうか。
速やかに信頼できる人に相談する、相手に拒否の姿勢を示すなどの適切な方法をとって、冷静に対応していきましょう。
悪質な行為であれば、場合によっては警察が相談にのってくれたり、弁護士の方が加害者側に警告を出すなど動いてくれることもあります。
これ以上被害にあわないこと、心身の安全を守ることを考え、防犯グッズなどの自分でできる防衛策は積極的に取り入れていくのがおすすめです。
現在、被害に悩んでいる方が安心して暮らせる毎日を取り戻せるように心から願っています。