同僚あるいは上司といった社内の人間がストーカーになってしまう。その一番の恐怖は「逃げ場がない」ということでしょう。
社内にストーカーがいると分かっていても、仕事だから会社に行かなければならない。この「避けられない」という状態は極めて大きい精神的負荷となります。
仕事は生活の柱ですが、仕事場である社内でストーカー被害に遭った時、私たちはどのように対処したら良いのでしょうか?
同僚や上司からのストーカー被害に苦しむ方のために、社内ストーカーに対する具体的な対策をご紹介いたします。
ストーカーになるのは一部の異常者だけじゃない 多くの女性が被害に
まず私たちが知っておかなければならないことは、ストーカーになる可能性は誰にでもあるということです。「とてもそういう人には見えなかった」という人物がストーカー化してしまうことは、十分に起こり得ます。
警察庁のデータによりますと、ストーカー被害の相談件数は2013年から5年連続で2万件を超えています。過去も現在も、これだけ多くの方がストーカー被害に悩まされています。
そして多くの方がストーカー問題を解決させ、現在は不安な日々から解放されているのも事実です。今現在被害に遭っている方は不安かと思いますが、決して一人ではありません。悲観し過ぎず、希望を持って解決に向けた行動を取るようにしましょう。
職場は「出会いの場」であり、社内ストーカーを生む土壌でもある
「マイナビウーマン」のアンケートでは、彼氏がいる社会人女性の約3割が「職場で彼氏と出会った」と答えています。仕事を持つようになると、出会いの場が限られるのは仕方のないことです。社内で恋愛対象を見つけるというのは、自然なことと言えます。
問題は、別れてしまった場合です。社内に元彼がいるというのは、非常に気まずいものです。そして気まずい以上に気を付けなければならないのが、元彼の社内ストーカー化です。
社内恋愛は現実的な出会いを求めやすい反面、元彼が社内ストーカー化するリスクがあることも認識しておきましょう。
被害者女性を苦しめる、逃れるのが困難な「社内だからこその被害」
実際に社内ストーカーの被害に遭った女性は、具体的にどのような被害を被ったのか。これを調べて行くと、正に「社内だからこそ」の被害が見えて参ります。
多くの場合、ストーカー被害はLINEやメール、SNSといったネットからエスカレートし、会いに来る、つきまとうといった直接的な行動に達します。
それと比較し、社内におけるストーカー被害にはどのようなものがあるのでしょうか?その具体例を見て参りましょう。
同じ職場であることを悪用し容易に行えてしまう「行動の監視」
社内ストーカー被害の大きな特徴は、被害者と加害者が「職場」という同じ場所に自ら赴くという点です。被害を受けている女性は、「あそこにストーカーがいる」と分かっていても行かなくてはなりません。この精神的負担はとても大きいものです。
ストーカーは社内で労せずターゲットを見つけることができます。そして同じ職場であることを利用して、ターゲットの行動を監視することが可能です。
例えば休憩中に何を飲んだ、同僚の誰々と楽しそうに話していた、上司に怒られていたなど。それらを逐一チェックし、ターゲットに「こんなことがあったよね」と報告してくる。このような被害が報告されています。
会社の体制や役職などの立場を悪用して行われる「個人情報の取得」
例えばSNSで知り合った男性がストーカー化した場合ですと、ネット上に住所や勤務先などの個人情報を載せなければ、ストーカーが会いに来るという被害を避けることが出来ます。
しかし社内にストーカーがいる場合ですと、個人情報を守るというのが困難になります。会社にも依りますが、非常時に備え、社員の緊急連絡先を容易に知ることができる体制にしている会社は、少なくありません。
もしストーカーが社員の個人情報を管理する立場の人間であれば尚のことです。上司に住所を知られ、突然家に来られたという被害も報告されています。
社内ストーカーが相手だと、個人情報を守るのが難しくなる。これは被害者女性にとって大きな悩みとなります。
「社内メール」や「社内チャット」を悪用して頻繁に連絡して来る
社員一人一人が個人アドレスを持っている会社は珍しくありません。これを悪用したストーカー被害も報告されています。
社内メール、あるいは社内チャットといった業務用の連絡先に、何通も同じ人から通知が来ている。これは社内ストーカー被害における典型的な被害の一つです。
問題は、業務で利用しているアドレスであるため、変えることができないこと。また、業務上必要な情報が送られているかもしれないので、一応開封して内容に目を通さなければいけないこと。
こういった「仕事だから仕方がない」という部分を突く、悪質な手段が同じ職場だと可能になってしまいます。
職場が同じだからこそ簡単に知られてしまう「行動パターン」
前述の通り、社内ストーカーはターゲットの行動を監視することが可能です。監視されて集められた情報から、行動パターンに気付かれる恐れがあります。
何時から何時まではデスクにいる、正午に休憩に入りあそこのお店に入る、何時にトイレに行く、など。ストーカーは、女性が普段何気なく繰り返しているパターンに気付き、それを利用することが考えられます。
例えば、ターゲットの女性が行きそうな場所に先回りし、待ち伏せする。そして偶然を装って会うことが可能になってしまいます。
また、退社時間が知られていれば、家まで後をつけられるリスクも発生します。行動パターンを知られることで発生するリスクはとても高いと言えます。
社内ストーカーにとって職場は簡単に「会い行くこと」ができる環境
同じ職場にストーカーがいる一番の恐怖は、ストーカーが簡単に会いに来ることができてしまうという点でしょう。
デスクにしろ、売り場にしろ、仕事をしている限りは守るべき「持ち場」があります。女性がその持ち場から離れられない状況を、ストーカーは悪用します。
わざとらしく近くを通ったり、わざわざ視界に入る場所で作業を始めたり、時には直接話しかけて来ることも…。
この、職場であることを悪用したつきまといの被害こそが、社内ストーカーの大きな特徴と言えるでしょう。被害に遭った女性は、仕事への責任感から「逃げる」という行動が難しくなります。
社内ストーカーへの恐怖から解放されるために取るべき具体的な対策
社内でストーカー行為を働く輩は、被害者女性が逃げられないという状況を悪用しています。逃げられないと分かっているからこそ、行動がエスカレートします。逃げ場のない人間に対する卑劣な行為と言えるでしょう。
社内だからこその被害を与えて来る相手に最も有効な手段は、こちらも「社内だからこそできる対策」を取ることです。
職場という環境を悪用する相手に有効なのは、職場という環境を活かした対抗策になります。具体的にはどのようなことをしたら良いか?それをご紹介いたします。
働く人間にとって「上司」という存在は影響力大 相手の上司に報告
「職場」であることは社内ストーカーにとっても同じです。職場のルールというものは、そこで働く人間の意識に強く働きます。多くの働く人にとって、会社がダメと言ったものはダメなのです。それを上手に活用しましょう。
有効なのは、ストーカーの上司に相談することです。上司は部下を管理し、指導し、ルールに従わせる立場の人間です。社内ストーカーにとって最も影響力のある人物と言えます。
多くの場合、上司に逆らった人間は会社に居づらくなります。仕事を辞めるリスクを背負ってまで社内ストーカーを続ける人物は稀です。
ストーカーの上司に相談し、協力を得ること。これは社内ストーカー被害を解決させるために最も有効な手段の一つです。
自分の上司や同僚といった仲間に状況を理解してもらい、協力を得る
社内ストーカーが他部署の人間であった場合、ストーカーの上司に相談したくても話したことがないので相談しづらい。こういうケースも十分考えられます。そういった場合は、社内で相談しやすい身近な人に話を聞いてもらいましょう。
まずは自分の上司。部下の相談には真摯に耳を傾けるのが上司の務めです。きっと力になってくれるでしょう。
身近な同僚に相談することも大切です。同僚がストーカーの動向を逆に監視してくれたり、ストーカーが近付いて来た時にあなたに知らせてくれたりと、守ってくれることが期待できます。
社内で起きることであるからこそ、社内に理解者・協力者を作ることはとても大事です。
状況が改善されない場合は「もっと上」への報告・相談が必要
周囲に相談してもなお状況が改善されない場合は、部長あるいはその上に位置する役員といった上層部に被害を訴えましょう。
ストーカー行為とはそもそも法律に反する行為です。社内での法律違反は会社にとって決して見過ごせないことなのです。社員から逮捕者が出れば、会社の名前に傷が付きます。そうならないように、被害に対して真剣に取り組んでくれることが期待できます。
部署の移動や勤務時間の変更など、上司の権限だけでは難しいことも対応してくれるかもしれません。また、ストーカー本人により厳しい警告がなされるでしょう。
上層部に相談する際は、訴訟を考えているのが相手に伝わるようにしましょう。
ストーカー本人には毅然とした態度を 通報する可能性も知らせよう
職場の同僚に対する気遣いは、社内ストーカーに関しては不要と言えます。なぜなら、ストーカーあなたの気遣いや親切心を「好意」と解釈し、ストーカー行為をエスカレートさせる恐れがあるからです。
嫌がる、怖がる、といった反応も好ましくありません。ストーカーにとっては相手の拒否反応すら喜びとなる場合があります。
理想は、毅然とした態度で接すること。親しみも恐怖も見せず、無関係な他人として接することです。
社内メールやつきまとい等の実害が酷い場合は、警察に通報する可能性があることを相手に知らせましょう。ストーカー行為は犯罪です。自分が違法行為をしているという自覚を、ストーカーに持たせる必要があります。
対策をきちんと行ってもストーカー被害が止まない場合にやるべきこと
上記の対策を全て行った上で、それでも状況が改善されない場合。それは被害者女性の苦悩にちゃんと向き合ってくれない会社に問題があるか、もしくはストーカーが周囲の警告に一切耳を貸さなくなっているかのいずれかでしょう。どちらも非常に悪い状態です。
改善されない場合は、最悪の事態を想定し、身の安全を優先した選択をなされることをおすすめ致します。少なくとも以下の2点は、決して選択肢から外さず、必要な時に速やかに行えるよう心の準備をしておくことが肝心です。
実は「警察への相談」で多くのストーカー事案が解決している
ストーカー事案の多くは、警察からストーカー本人に警告が行われることで解決しています。警察が警告してもなおストーカー行為を続け、逮捕や事件に繋がるという例は、非常に稀なのです。
社内ストーカーの被害に対し、職場が協力的でない場合。あるいは職場の仲間が協力しているにもかかわらず、被害が止まない場合。こういったケースでは警察に通報することも止むを得ません。
通報する際は、ストーカー被害の証拠が必要です。送られて来た社内メールや、社内チャットのログは、大変重要な証拠となります。また、いつ、どこで、何をされたかを記録しておくと、これもまた重要な証拠となります。できるだけ証拠を揃えておきましょう。
改善されない時は安全を優先 職場を変えることを選択肢から消さない
警察に相談したにもかかわらず、重大事件にまで発展してしまった。こういう事例は極めて稀ですが、全く無いわけではありません。
2017年のストーカー事案相談件数は23079件です。内、傷害・暴行等の身体に被害を及ぼした事例は364件。割合にすれば全相談件数のわずか1.6%ですが、ストーカーによる身体的被害が0ではないのが分かります。
もし身の危険を感じるようになったら、ストーカーから身を隠すために引っ越すことも視野に入れましょう。
居を移すこと。職を変えること。親しい人たちと距離ができること。それらは全て受け入れ難いと思いますが、身の安全を最優先なされることを願います。何かあってからでは遅いのです。
まとめ
職場という逃げ場のない空間で行われるという点から、社内でのストーカー行為は極めて卑劣で悪質なものと言えます。被害に遭われている方の心的負担はとても大きいでしょう。
社内ストーカーへの対策の基本は、周囲に現状を理解してもらうことです。上司や職場の仲間に相談し、協力者を得るようにしましょう。可能であればストーカーの上司に相談するのが理想です。
周囲の協力を得てもなお被害が止まない場合は、会社の上層部に被害を訴えるようにしましょう。それでもストーカーがメールやつきまとい等を辞めない場合は、通報も止むを得ません。危険を感じるようになったら、安全を最優先した選択を採るようにしてください。